現在『METROPOLIS』という艶露絵を描いております。
からみではない立像でございます。
タイトルのメトロポリスといいますのは1927年に公開されたF・ラング監督の作品のことでございまして、
その作品に出てくるロボット(マリア)にインスパイアされたのでこのタイトルにいたしました。
つまりいま描いているのは人造人間、超高級ダッチワイフというつもりで描いております。
そうして夢中で描いておりますと自分があたかもその美しいロボットを製作するマッド・サイエンストになったような気分になりまして、
そしてハタと気付いたのでございます、今までもこうやってこの世に存在しない美しいロボットを描き続けてきたのだ、と。
私はずっとこの世に実在する人間「女」の美しさを追い求めて描いているつもりでございました。
しかし〈人造人間マリア〉を描いているとき「こんな女はこの世に存在しない」とはっきり認識したのでございます。
そう、私が今まで描いてきた「女」たちは皆この世に存在しない美しきものたちだったのでございます。
それは現実の女性たちを追い求め写し取ったものではなく、
それをよすがに私の中の美とエロスと情念を結晶し作り上げた、この世にない美しい女たちだったのでございます。
私は現実の女を描いているのではない、理想のエロと美を創作しているのだ ―
いつしか私は、美しい人造人間を作るマッド・サイエンストの気持ちで私の〈人造人間マリア〉を描いておりました…