2015-04-08(Wed)
『歌麿の謎 美人画と春画』
2005年刊。
歌麿の春画・美人画を分析考証評論した内容でございますが比較的軽い内容で、
初心者でも容易に読める本でございます。
私は浮世絵師の中では北斎に心酔しており歌麿にはそれほど興味がありませんでしたので、
その作品や生涯をよく知りません。
しかしこの本を読んでなぜ歌麿が浮世絵春画を代表する絵師になったのか少し分かった気がいたしました。
北斎はじめ他の絵師たちにとって春画はあくまで作品ジャンルの一つに過ぎない感がございますが、
歌麿は己の本道として全てを春画に懸けていたように思えたのでございます。
寛政二年(1790)「寛政の出版取締令」から始まり何度も春画など表現物の取り締まりがあるのですが、
歌麿はその都度このお上の取り締まりに歯向かったようでございます。
しかしついに50日間の手鎖の刑となりその2年後に没します。
「歌麿はレジスタンス(抵抗運動)として美人画を描き続けた」との一文があり、
私にはその気持がよく分かるのでございます。
エロ(春画)には自ずと革命性があります。
それはタブーゆえに持ち得るエロの宿命ともいえましょう。
200年前エロに命を懸けた歌麿を拝して私も及ばずながら後に続く所存でございます。