2014-11-26(Wed)
葛飾北斎 『萬福和合神』
葛飾北斎 萬福和合神 (浮世絵春画リ・クリエイト版) (2014/09/24) 葛飾北斎 商品詳細を見る |
葛飾北斎、六十一歳にして最後の艶本でございます。
おさねとおつび、性遍歴する二人の女性の十三歳より三十歳までを描くストーリー。
正直に言いまして初め絵を見たときには落胆いたしました。
北斎らしからぬ下手糞な絵に見えたのでございます。
しかしながら読み進めていくうちにどんどん引き込まれていきまして絵の雑さは気にならなくなりました。
北斎はストーリーの方を重視したのではないか、と思うほどでございます。
二人とも快楽にいささかの迷いなく貪欲に性遍歴を重ねていきますが、
一方は裕福になり一方はどん底まで落ちていきます。
最後はこの幼なじみの二人が偶然ある宿で出会いお互いの人生を語り合いますが、
言い争いになりそうなところへ和合神が現れて…。
私個人としましては、北斎も私と同じような感覚で春画を描いたのだろうと感得できました。
「おつびは尻をもじもじと鼻息荒く目を細め、男の舌をちぎれるほど吸いながら、
婬水がビョコビョコビョコとはじき出して「サアナさあヨさあヨ」と仰向きになりつつ、
とんけつ(注・相手の男の名)がまらを握るに、不思議や此まら世に言う釣鐘まらという物にて…略」
上、中、下巻合計二十四枚の春画の殆どにこのような艶文と台詞がびっしりと書き込まれております。
私は絵を第一に考えておりますが、やはりついつい文章を付けてしまいます。
春画に文章が付くのはもちろん知っておりましたがこの『萬福和合神』の怒涛のいやらしい文章を読んで、
エロ絵師の業とでも言うようなものを初めて理解できた気がするのでございます。
二人はときに心ない男たちに強姦されたりいたします。
今現在、この描写を創作で発表したら発禁になるかも知れませぬ。
読めば分かりますがこの本はそんなことで否定されるべき作品ではございません。
時代を超えてこのような素晴らしい艶本を読めることは幸福なことでございます。