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2013-12-18(Wed)

【四畳半襖の下張り】


四畳半襖の下張り四畳半襖の下張り
(2012/12/19)
金風山人、伝永井荷風 他

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有名な裁判にもなっている本なのでタイトルだけは知っていたのですが、
発禁本で読むことは出来ないのだろう、と思い込んでいた作品でございます。
電子書籍で購入しましたのでよく分かりませんが、
文庫にしたらおそらく50ページもない短いものです。
永井荷風の作ではないかと言われている古い作品なので、
現代のわれわれが読んでもそんなにエロくないのではないかと思ったのですがなかなかどうして、
古典的な描写でございますがかなりエロい内容でございました。

金風山人という人物が一件の中古家を購入してその手入れをしている際、四畳半の部屋の襖の下張りに使われている紙に何か書かれているのを見つけます。
物語はほとんどその内容に終始しますがその大半は下張りの作者の、むかし遊女だった妻との初めての交合の描写でございます。
ですから言ってみればこの作品にはセックス描写しかない、いえ、それが目的で書かれているのは間違いございません。
わいせつか否かの裁判にもなった作品でございますから、
きっと多くの人がエロ以外の要素を引っ張り出しておられると思いますが、
私に言わせればこの作品は現代のAVそのまんまでございます。
しかしだからこその凄さも感じるのでございます。
作者不詳なのでこの作品が書かれたのがいつなのか恐らく不明なのでしょうが、
同名の永井荷風の作品(エロではない正式な作品)がありそれは大正6年(1917)の作品。
また、荷風自身はこの春本版の件で1948年に警視庁の事情聴取を受けたそうでございます(ウィキペディアhttp://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%9B%E7%95%B3%E5%8D%8A%E8%A5%96%E3%81%AE%E4%B8%8B%E5%BC%B5)。
少なくとも戦後すぐに書かれた作品。
地下作品とはいえ当時の情勢を考えると作者の「自由」に対する挑戦、覚悟のようなものを感じるのでございます。
私はこの作品を読みながら「エロを書いて何が悪い」という作者の声を聞く思いでございました。
うまく説明できませんが、この「いったい何が悪いのだ」という気持ちが表現における究極の理由だと思うのでございます。

この作品のエロ描写を読みながら思いましたが、
私の絵の描写を文字に置き換えたらこうなるような気がいたしました。
助兵衛心のありようが似ているのかも知れませぬ(笑)。

**********
〈上のほうにしたる片手やり場なきと見せかけて、女の尻をいだきみるに堅ぶとりで円くしまった肉付き無類なり。〉
〈女は胴のあたり少しくびれたように細くしなやかにて、下腹ふくれ、尻は大きからず小さからず、円くしまって内股あついほど暖かに、その肌ざわり絹のごとく滑らかなれば、道具の出来すこしくらい下口なりとて術磨けばずいぶんと男を迷わし得べし。〉
**********
(**********間は作中より引用。以下同)

この女体を撫でるような描写は作者の気持ちがよく分かるところでございます。
次に、見事なセックス描写を引用させて頂きます。

**********
〈大腰にすかすかと四五度攻むれば、女首を斜めに動かし、やがて両足左右に踏ん張り、思うさま股を開いて一物をわれから子宮の奥へ当てさせる様子。〉
〈女よがり死するも知れずと思うにぞ、息を殺し固唾を呑みつつ心を他に転じて、今はの際にもう一倍いやが上にもよがらせ、おのれも静かに往生せんと両手にて肩の上より女の身ぐっと一息にすくい上げ、膝の上なる居茶臼にして下からぐいぐいと突き上げながら片手の指は例の急所攻め、尻をかかえる片手の指女が肛門に当て、尻へと廻るぬめりをもって動かすたびたび徐々とくじってやれば、女は息引き取るような声して泣きじゃくり、いきます、いきます、いきますから、アレどうぞ、どうぞと哀訴するは、前後三箇所の攻め道具、その一つだけでも勘弁してくれという心か。〉
〈髪はばらばらになって身をもだゆるよがり方、こなたも度を失い、仰向けの茶臼になれば、女は上よりのしかかって、続けざまにあれあれまたいく、またいくと二度つづきの淫水どっとあびせかけられ、これだけよがらせてやれば思い残りなしと静かに気をやりたり。〉
**********

ここにはエロしかございません。
断じて他の、芸術的、文学的要素は微塵もないと私は言いたい。
そして、いったいそれの何が悪いのでしょうか。



最後に、作品の初めの方に出てくる一文を。
これは名文でございましょう。

**********
〈持って生まれし好きごころ、いくつになっても止むものでなし。〉
**********

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