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2012-05-27(Sun)

バタイユ『眼球譚』

眼球譚(初稿) (河出文庫)眼球譚(初稿) (河出文庫)
(2003/05)
ジョルジュ バタイユ

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他の人間にとってはこの世界はまっとうなものに思われる、
その訳はまっとうな人間は去勢された目をしているからだ。
彼らが淫らなものを恐れるのはそのためだ。
(本文より)
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この歳になるまで、エロはエロであって他の何物でもない、と思っておりました。
ここで言う私の「エロ」は女性の美しさに感じる淫猥な感情のことでございます。
つまりはいわゆる「助平心」であります。
ですのでエロ画にアートやその他の要素を感じると不純な感じがし、
逆にそんな作品を軽蔑したものでございます。
より純粋に「助平」的であること、それが私のエロでございました。

そんな考えでしたので、以前からSMやスカトロは果たしてエロなのだろうか?と疑問を感じておりました。
嗜好の問題もあります。
私は至って平凡な性の持ち主でしてSMやスカトロ、
ホモセクシャルやロリータに性的なものを感じないのでございます。
そのせいもございましょうが、SMやスカトロのどこにエロがあるのか全く分からなかったのでございます。

前回ご紹介した澁澤龍彦『エロティシズム』で、
「セクシュアリティとは生物学的な概念、エロティシズムとは心理学的な概念」と学び、なるほどと合点いたしました。
目からウロコでございました。
あの苦痛や虐待や汚穢が心理的な性的快楽になる、それが「人間」なのかもしれない、と気付いたのでございます。


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「聖龕の中には聖体パンがおさまっている、それに葡萄酒を入れる聖餐杯も揃っている。」
「淫水の匂いだわ。」
無酵母パンを嗅ぎながら、シモーヌは言うのだった。
(本文より)
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バタイユの『眼球譚』といいますともっぱら、
作中に度々登場する眼球や卵や睾丸の象徴性や、
前半部で死んでしまう女友だちのマルセルの死体の横で、
私(主人公)とシモーヌ(主人公の愛人)がセックスをするシーンなどが取り上げられますが、
そんな部分にこだわる人たちは恐らくこの小説に感動できなかったのではないかと思われます。

私が衝撃を受けたのは後半部分でして、
闘牛の場面と、それに続く神父を犯して穢して貶める場面でございます。

闘牛の章では死とエロスが、
神父の章では背徳とエロスが、
それぞれ強烈に描かれております。

第10章「闘牛士の目」では、
牛に突かれて腹わたをぶちまける馬、
取り出した牛の睾丸の一つを齧り一つを陰部に入れるシモーヌ、
牛に突き殺された闘牛士の死体とその垂れた右目、
同時に起こるシモーヌの激しいオルガスムスが描かれます。
このとんでもないイメージの大きさに今までぼんやり抱いてきた自分のエロス像が吹っ飛んでしまいました。
そしてやはりエロスは極めて死に近いものだとますます実感したのでございます。

第12章では神父がシモーヌや主人公たちに地獄のような辱めを受けます。
聖体パンの匂いをシモーヌは淫水(精液)の匂いだと言う。
はっ、といたしました。
性と聖は非常に近いのではないでしょうか。
これは悪魔と天使の関係に似ているのではないでしょうか。
ゆえに聖は性を忌み嫌い押さえつけ禁止する。
いずれ性の反乱は目に見えておりましょう。
自由を主張し、聖の偽善性を暴き立てたい欲求に駆られて。

この章を読んでいて私は映画『エクソシスト』を思い出しました。
悪魔に乗り移られた少女が神父に向かって汚い背徳的な言葉をわめきちらし、
ロザリオで自らのおまんこを何度も突き刺す。
日本人の我々にはこの映画の本質は理解しきれないと思うのですが、
キリスト教社会でのこの表現は恐ろしく衝撃的だったに違いありません。


今回この『眼球譚』を読みまして、
エロスをただの淫猥な情欲としか捉えていなかった自分の幼さを思い知らされたのでございます。
エロスとは何か。
それを知るにつけ私の作風も変わるでしょうか?
まだ見ぬ自分の作品を楽しみにしている私がここに居るのでございます。

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コメント

イラッシャイマセ

逝く 逝く イッチャウ! 

BLACK PACK様、しゃにむにで私の絵を見て頂いていたのでしょうか。
これからもよろしくお願い致します。

私にとってのエロスとは「狂喜」です。

高校生の時、初めて見たSMビデオの衝撃…。

その原点を、ここ最近忘れていました。

反省です。

宿命

キリク様。
私は自分のエロス観がどんどん変化しているのを感じております。
それは自分の春画を他人様に見て頂くようになったこの3ヶ月程前からでございます。
なぜエロにこだわるのか。
それは自分の作品(絵)に深く関わること、つまりは自分に深く関わることだからでございます。
エロについて考えるなどとは、
他人様から隠れて一人でこっそり自分のためだけに描いていた頃には思いも寄らぬことでございました。
それはつまりエロスを作品として表現し始めたということなのだと思います。
キリク様も苦悩を抱いておられるのは表現者ゆえ。
ある意味、それは宿命と言えるのかもしれませぬ。
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歓喜天翁

Author:歓喜天翁
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